月の砂漠をホーリーボルト

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チカ、それから 6月
 わしの部屋で子供を産む気満々に見えたチカのために、「生まれたら連れてこいよ」なんて話しかけながら段ボールと新聞紙で簡易出産所をこしらえたとたん、姿をくらました。
 それからは、何をしているときでもチカのことが案じられる。子供はもう生まれたのか、何匹産んだのか、どんな毛色の子供なのか。子育てはできているのか、そもそも母体は無事なのか。

 再びチカが姿を見せたのは1ヵ月後だった。庭に面した網戸を引っ掻く音に覗いてみると、チカがいた。網戸を20センチほど開けると、すっと部屋に上がってくる。おお、元気だったかと全身を撫でると、お腹がぺたんこになっている。出産は済んだようだ。しかし、仔猫の姿は見えない。

 母猫のなかには育児を放棄するものがいると聞いた。でもチカはそんなタイプじゃないだろう、と身内でもないのに贔屓して考える。チカはわしの布団で熟睡している。出産による体力の消耗は相当なものだろう。ひたすら寝ている。子供はさておき、おまえが元気でよかったよ。

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| チカ | 02:17 | comments(6) | trackbacks(0) |
チカ、それから 5月
 チカは連日わしの部屋に通ってきた。
 全身を撫でられるのが好きなようで、頭をこすりつけて催促する。チカは口のきれいな野良で、竹輪以外の食べ物をほしがることはなかったのだが、なんでも食べるようになった。以前は鼻もひっかけなかったキャットフードを黙々と食べる。

 全身マッサージをしていて明らかになった。チカは妊娠している。おまえ、メスだったのか。日に日におっぱいが大きくなり、お腹も膨らんできた。お腹を触ると、なかで胎児が動くのがはっきりわかる。
 かつてはひとかけらで30分も遊んでいた竹輪も、すぐに食べてしまうようになった。
食事が終わると、こんこんと眠っている。



 ぐりんぐりんと動く胎児をチカの腹ごしに触りつつ、「生まれたら遊びにこいよ」と話しかけてみる。この胎児の父親が近所の小面憎い野良猫のなかのどれかだと思うと、「まったくうちの娘になんてことを」と思うが、猫の場合はメスから誘うらしいのでしかたなし。

 わしの部屋はチカにとって安全な寝場所らしい。多い日は8時間ほども滞在している。おまえ、ここで産む気まんまんだな?
| チカ | 06:15 | comments(3) | trackbacks(0) |
チカ、それから 4月
 チカは再びわしの部屋を訪れるようになった。来るたびにわしへの警戒心は薄れ、頭を撫ぜてやれるくらいにまで慣れた。

不思議なことに気付いた。チカの首輪だ。ぼろぼろになっているので一目ではわからなかったのだが、チカの首に巻かれていたのは、わしがやった首輪ではなかった。わしがしてやった首輪はナイロン製で、自然に切れるようなものではない。しかしいまチカの首に巻かれているのは紐状で、風雨にさらされたのと、おそらくチカが足で引っ掻いたのとで、ぼろぼろになっている。わしがしてやった首輪がきつくなっているのを見た誰かが、新調してやったのだろう。

 ようやく写真を撮ることもできた。竹輪を与えて遊ばせているときは一瞬たりともじっとしていないから、これまでは撮影ができなかった。チカが落ち着いているときに撮ろうとしても、わしが構えた携帯電話を警戒して、すっと逃げてしまっていた。やっといくらかわしを信頼してくれたらしく、カメラ目線の写真が撮れた。ぼろぼろの首輪は、新しいものに交換した。うん、野良にしてはやっぱり美形だ。


| チカ | 08:12 | comments(0) | trackbacks(0) |
チカ帰る
 2階の部屋のハゲおやじが餌を与えまくるものだから、野良猫どもが図々しくなっている。わしを見ると逃げるくせに、ハゲおやじにはすり寄って餌をねだる様が小面憎い。この一帯の野良猫は餌にしか興味がないようでかわいげがない。ただ一匹、チカを除いては。

 チカはどこでどうしているのだろう、とことあるごとに考えていた。物おじしない愛嬌のある猫だから、どこかの家の飼い猫になっているといいのだが……と期待しつつも、もう生きていないかもなあと暗い想像が拭い去れなかった。生きていればずいぶん大きくなっているだろう。あのときつけてやった首輪がきつくなってチカの首を戒めてはいないだろうか。せめて首輪だけでもはずしてやりたいものだ。考えてもしかたのないことを、何度思っただろう。

 夜半。
 サッシの外にある網戸をガリガリ引っ掻く音がする。船底をガリガリ齧る春の鮫、ではない。
馬鹿猫が久しぶりにやってきたのかと思った。馬鹿猫というのは、文字通り馬鹿な野良猫のことだ。チカと同じアメリカンショートヘアーの血が混ざった野良なのだが、チカに似ず愛嬌がない、手癖の悪そうな目つきの猫だ。
 「食べ物がほしいときは『ください』と言うのだ」と教えたら、ニャーと泣くようになった。昼間でも夜中でも、網戸の外で「ニャー」と泣く。ここまでは賢いと言える。しかし、食べ物を与えると「フー!」と唸る。何かを威嚇するときに発する音だ。しかし、馬鹿猫は威嚇しているわけではない。これが「いただきます」だと間違って覚えてしまったらしい。
 ニャーフーニャーフーで何度も餌を与えていたある日のこと。フーと唸るから食べ物を馬鹿猫の近くに置こうとしたら、右手を思いっきり引っ掻かれて派手に血が出た。何に対して警戒していたのか知らぬが、このときばかりは正しい意味での「フー」だったらしい。餌をくれる人間を引っ掻いてはいかん、と頭をひっぱたいたら外へ逃げて行った。その後も時間を問わずにやってきて網戸の外からニャーニャー鳴く。餌をくれてやろうと思ってサッシを開けると、わしの顔を見て逃げていく。逃げるなら呼ぶな。それでも何十回もやってきては泣く。しまいにはわしが窓を開けるのをやめた。馬鹿猫も諦めたようだった。
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| チカ | 04:12 | comments(0) | trackbacks(0) |
チカがいない
 庭に顔をだす7匹の野良猫のなかでいちばん気に入っていたチカの姿が見えなくなった。

 アメリカンショートヘアの中猫で、竹輪が大好きだからチカ。並大抵の好きっぷりではなく、ちぎった竹輪をくれてやると、30分くらい夢中で遊んでる。後ろ足で立ち上がって両手で竹輪を持ち、放り投げては取りに行き、飽きずに遊ぶ。

 野良猫をつかまえる怖いおじさん対策として、100円ショップで買ってきた首輪をつけたやったら、それ以来姿を見なくなってしまった。ほかの小面憎い猫どもは毎日来るのだが。
| チカ | 03:29 | comments(0) | trackbacks(0) |